「新型コロナウイルス禍がもたらしたスタートアップ崩壊の危機に関する提言を提出」についてリリースを出しました。

技術系スタートアップの救済へ
「新型コロナウイルス禍がもたらしたスタートアップ崩壊の危機」に関する提言を提出
開発期間が長い技術系スタートアップの初期段階にも支援の拡大を

 国内最大級の技術系ベンチャー企業の支援組織『TEP』(正式名称:一般社団法人TX アントレプレナーパートナーズ、代表理事:國土 晋吾)は、新型コロナウイルス禍を通して深刻化する技術系スタートアップの環境に関する提言書「新型コロナウイルス禍がもたらしたスタートアップ崩壊の危機~スタートアップ企業の危機的現状と公的支援への提言~」を5月20日にとりまとめ、5月22日に関係省庁へ提出したことをお知らせします。

提言書詳細はこちら

 新型コロナウイルス(以下、COVID-19)は緊急事態宣言を招き、人々の生活が制限されたことで経済は大きく落ち込んでいます。特にTEPが支援する技術系スタートアップの置かれている状況は危機的です。画期的な技術を基に他社が真似できない領域を切り拓き、高収益を目指す技術系スタートアップは、約5年から長い場合は10年を超える製品開発の期間が必要となります。その間、大抵の場合売り上げはなく、外部からの投融資により研究開発への投資を集中させるビジネスモデルとなっています。現行のCOVID-19に対する企業支援では、昨年比の売り上げ減少に対する支援が中心となっており、この様な技術系スタートアップのビジネスモデルや特質は考慮されていません。

 未来の産業を創出し、経済や雇用を担うスタートアップの成長が止まることは、10年後、20年後の日本の国際競争力を著しく衰退させます。技術系スタートアップの現状共有や、技術系スタートアップへの早急な支援を行う必要があると判断し、下記の5つの提言を取りまとめました。

【提言1】 技術系スタートアップへの緊急避難支援
売り上げがなく開発段階にある技術系スタートアップも、給付金や融資の対象となる柔軟な支援が早急に必要

【提言2】 既存起業支援制度の窓口再開や審査対応の強化
売り上げ実績のないスタートアップも対象となる、日本政策金融公庫の既存起業支援制度に関する審査対応の再開・強化

【提言3】 政府系VCの積極的な投資
民間VCやCVCが出資に消極的になる中、政府系VCや大学VCなどが積極的に投資を検討すべき

【提言4】 スタートアップ専用支援基金の設立
将来の新産業創出、雇用確保の視点から、スタートアップ専用の緊急支援制度の設立が必要

【提言5】 規制緩和の推進
前例のない分野を切り拓きビジネス創出するスタートアップの成長のために、今回の危機対応に起因する規制緩和だけでなく、積極的な規制緩和や規制撤廃の推進による後押しが重要

提言書詳細はこちら

 

■日本の技術系スタートアップ支援環境の変化
  TEPは2009年に技術系スタートアップ企業への支援エコシステムを構築する目的で、起業・経営経験が豊富なエンジェル投資家が中心となり設立しました。設立前年の2008年にはリーマンショックが起こり、スタートアップが窮地に立たされる中、TEPはリスクマネーの供給や支援エコシステム構築を行ってきました。それから約10年、世界中でAI、ロボット、先端医療、宇宙開発などの分野でイノベーティブな技術が生まれ、目まぐるしい速さでビジネスのルール自体が変わってしまうゲーム・チェンジが起こっています。日本でも、大企業を中心にオープン・イノベーションが注目され、CVCも複数組成されてスタートアップを支援する環境は大きく改善されています。国内からもユニコーン企業も複数社出現しています。

 このような中、COVID-19がアウトブレークし、スタートアップの活動にも甚大な影響を与えています。COVID-19の経済への影響はリーマンショックを超えて1929年に発生した世界恐慌に匹敵する負のインパクトを与えています。COVID-19の発生源となった中国では、2020年1月と2月、2か月間においてベンチャー投資額は前年度比で50%以上の減少となり、同様の状況が世界中に広まってます。国内でも、新規の投資案件を完全に停止しているVCも多く見受けられ、スタートアップ企業が資金調達できない状況に陥っており、日本のスタートアップの支援エコシステムは崩壊の危機に直面しております。

 

■技術系スタートアップの厳しい4つの実情

1)現行のCOVID-19緊急対策制度は、技術系スタートアップに合致しない制度である
 技術系スタートアップは、長い研究開発期間を必要とし、研究開発では多くの機材や実験スペース、研究人員を抱えている場合が多く、これらの固定費が大変大きいです。日本は、COVID-19禍において中小企業に対する支援策が打ち出されていますが、売り上げ減少に対する支援が主で、この様な技術系スタートアップのビジネスモデルや特質は考慮されていません。

2)支援制度の受付停止や大幅な遅れによりスタートアップは会社存続の危機に
 通年で行われている日本政策金融公庫の起業支援制度である創業融資支援や挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)なども窓口が新型コロナウイルス感染症特別貸付の対応に追われているため受付業務が停止していたり、審査に大幅な時間がかかっているとの報告もあがっています。このため技術系スタートアップの中には、予定の期間内に資金が得られないケースが出てきており、会社存続の危機に立たされています。

3)VCやCVCの消極的姿勢により、増資の計画が立てられない
 オープン・イノベーション推進の一環として多くの大企業がコーポレートVC(以下、CVC)を設立していますが、COVID-19の影響で今後の経済動向が不透明なことなどから、VCだけでなくCVCの多くも、新規の投資案件の停止、もしくは消極運用になるといわれています。

4)大手企業との共同開発に遅延。共同開発費用の支払い遅れが懸念される
 順調に製品開発が進み潜在顧客でもある大手企業と共同開発を行っている技術系スタートアップも、大きな壁に突き当たっています。通常、技術系スタートアップ企業は共同開発契約を締結し、マイルストーン毎に開発費を支払ってもらうケースが多いですが、COVID-19の影響で大手企業は外部者の施設への立ち入りを禁止しています。そのため共同実験や試作等の作業が止まり、必然的に共同開発に遅れが発生しているため、大企業からの開発費の支払いに遅れが発生する可能性が高いです。

 

提言書詳細はこちら