TEP Story:vol.2 大企業とベンチャー企業、コラボレーションの秘訣

Share Button

<対談企画>技術系ベンチャー企業の挑戦から日本の未来を見る 

上原 高志 氏(三菱東京UFJ銀行 法人企画部/TEPコーポレート会員)
渋谷 修太 氏(FULLER株式会社 代表取締役社長/TEPアントレプレナー会員)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

シリーズ第2回目は、コーポレート会員の三菱東京UFJ銀行:上原高志氏と、FULLER:渋谷修太氏の対談です。TEPでの両社の出会いや、大企業とベンチャー企業のコラボレーションの秘訣について、それぞれの取り組みからお話を伺いました。

まずは、FULLERの事業について教えてください。

渋谷:弊社は、スマートフォンの領域に特化し、スマートフォン向けのビジネスをBtoC、BtoBの両輪でやっています。どちらのビジネスでも、ミッションはスマートフォン上で起こる問題の解決です。BtoCのユーザー向けには、端末の電源の持ちが悪いだとかスマホ依存の問題を、ユーザーのスマホの利用状況のデータをもとに、改善を提案しています。一方、BtoB向けには、「App Ape」というスマートフォン向けアプリの分析サービスをやっています。アプリの世界は、どのアプリが、誰にどの頻度で使われているのか、どれくらいのユーザーが居るのか、などがブラックボックスなんです。「App Ape」は、テレビの視聴率調査みたいなもので、アプリ開発者から見て自分たちのアプリや競合のアプリがどのくらい使われているのか、性別年齢の構成などを教えてくれます。

では、三菱東京UFJがベンチャー支援に取り組む背景は何ですか?

上原:銀行はお客様がいないと成り立たちません。今、取引しているお客様は大企業から中小企業までたくさんいらっしゃいますが、やはり、次世代の企業や産業が育たないと商業銀行は成り立っていけないと思っています。そこで、まずはベンチャーとのつながりを持って行こうととにかく情報を集めることからスタートし、今年の中期経営計画でもベンチャー育成を盛り込んでいます。

かなり本気の取り組みのようですが、そこまで理解を得るのは大変だったのでは?

上原:一年半ほど前から、ベンチャー企業を育てるということはどういうことなのか?を真剣に考えてきました。でも当初は、ベンチャー企業ってどういうものなのかそもそもよくわかっていなかった(笑)。よくわからないものは見に行くしかない。そんな時に、TEPを知り実際参加してみると、沢山の方が集まって何か面白そうなことをしていました。それでとっさに「僕らも入っていいですか?」と聞き、すぐに入会を決めました。そのとき参加したピッチ会で、渋谷さんがプレゼンされていたんです。

渋谷:当社が初めて出たTEPのピッチ会でした。

上原:最初は、軽いお兄ちゃんだな(笑)、なんでずっと笑っているんだろう、と不思議でした。でも、プレゼンの中身を見るとちゃんと成り立ったビジネスモデルでした。その後、何回か話すうちに、さらにそれを実感していきましたね。

両社のコラボレーションについて教えてください。

上原:その後、支援というより僕の方がお願いに行ったんです。銀行でもアプリを使って、ビジネスに役立つサービスを作りたいと思っていたんです。FULLERさんのビジネスモデルは、ユーザーが使いながらデータ収集も出来る。それは凄いと思い、参考に考えていました。ただ、開発のお願いに行ったものの、FULLERさんには見事に断られちゃいました。「うちは、そっちはやっていません」って。「そうですか・・・」ってシュンとして帰ったんです(笑)。

大手企業からの持ちかけだと、少し事業範囲がずれていても、嬉しくて取り組んだりすることもありそうですが、FULLERにとってそこは違ったわけですか。

渋谷:そうですね、でも今後何かの形でマッチするものがあればやっていければ嬉しいなと思っています。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

◀FULLER㈱ 渋谷代表取締役社長

ベンチャー向けコーポレートカードとは何でしょうか。

上原:会社経営では、クレジットカードを使っていた方が経理処理は楽なんです。いちいち現金でやると、その日の日付で経理処理をしないといけないだとか、累積したのを振り込むという作業も発生するので、結構大変なんです。ただ、ベンチャー企業は業暦が浅かったりするので、通常の審査だとそんなに大きな利用限度額が付与されない。個人だったら十分な額ですけれど、法人だと足りない額。色々な方が結構困るよねーと話していました。でも皆さんは、そういうものだと割り切っていました。カード会社が無理だと言うので、そういうものなのだと思っていたみたいです。

意外と実現が難しいのですね。

上原:でも、「そんなことは無いんじゃないの?」と思ったんです。うちのグループにはニコスもある、出来る筈だと思って、カード会社に聞いてみると「それは彼ら単独じゃ出来ません、誰かの保証がないと出来ませんよ」と。それじゃ「銀行が保証したら出来るの?」と聞けば、「出来ます」と言われました。だったら、出資金の一部をうちに定期預金で預ける代わりに、それを担保にして我々が保証しますという形を作りました。ただ、あくまで「まずはやってみましょう」というプロジェクトだったので、銀行とそのカード会社の担当者に言ったのは、「新しいシステム開発はするな」ということです。システム開発をしちゃうと大変になるので、スピードも遅くなるし、失敗も許されない。人力で頑張れ!と(笑)。はじめはカード会社も、「何件ぐらい来ますか?」と怖がっていたのですが、「とりあえずは、2、30件だから」というと、「それぐらいなら頑張ります」と言ってもらえ、一ヶ月ぐらいで出来ました。

利用限度額はいくらまでですか?

上原:担保となる定期預金を預けてさえいただければ、特に上限は設けていません。

渋谷:うちの会社は元々、三菱東京UFJ銀行に預けていたので、それをそのまま担保にしてもらうので全く構いません、ということになりました。

他にはどんなコラボレーション事例がありますか。

渋谷:上原さんからお声をかけていただいて、ベンチャー向けのビジネスコンテスト「Rise Up Festa」に参加させていただきました。そこで出会った三菱UFJリサーチ&コンサルティングさんと、これから一緒に事業をやっていこうと話が進んでいますね。

上原:今回「Rise Up Festa」は第二回目だったのですが、FULLERにもご案内させて頂きました。

※Rise Up Festa:新規性・独創性を有する事業や既存の事業領域を超えて新たな事業に取り組んでいる中小企業・成長企業に対し、三菱UFJフィナンシャルグループ (MUFG)のネットワークや経営支援などこれまでに培ってきた豊富なノウハウを最大限活かし、中長期的なビジネスパートナーとして支援していくプログラム。

三菱東京UFJ銀行 上原氏▶

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

「正直に言う」ことで信頼関係が生まれ、信頼関係がビジネスを生む

大企業とベンチャー企業の間では、「共通言語の違い」でコラボレーションの実現が難しい、という話をたまに聞きます。そういうことは有りませんでしたか。

上原:共通言語は日本語です、日本語(笑)

渋谷:大企業全体とベンチャー企業全体の平均値で言ったら、たぶん共通言語は違うと思いますが、それだけ人がいれば、点と点とでは言語が合う人がいて、それがマッチすれば何か始まるのかな、と思います。

上原:ベンチャー企業からすると敷居が高いと思っちゃっているだけで、大企業は担当者の勇気がないだけです(笑)。あとは出来るときは出来るし、出来ないときは出来ない、それだけですよね。難しく考える話じゃないです。

渋谷:あと、最初のころは出来なかったけれど、その後会話を続けていく中で出来るようになるということもあるし(笑)。

上原:興味も変わりますからね、お互い。

常に対話を続け、関係を深めていくことが大事ですね。

渋谷:そうです、そして何かの時に思い出してもらえたらいいと思います。思い出す対象になるためには、前提として、出会っておくことがやっぱり大事ですね。

上原:そうですね、接点がないと。

出会っておくだけでなく、忘れられないためにしていることはありますか?

渋谷:基本的に、「すべて正直に言う」ことが大事だと思っています。こういうのはできるし、こういうのはやりたいし、こういうのだと今は出来ません、と。それによって相手の頭の中で、僕らが色々タグ付けして貰えると思います。

上原:先ほど話したように、出会った当初の僕からのお願いをした際、「今はそういうアプリの開発は、出来ません」とスパーンと言われました。でもそれで僕たちの評価は、「あ、この経営者しっかりしているな」というものになりました。目的を持って事業領域を拡大するのは良いけれど、戦略がないままに取組領域を拡大してしまうのは、支援するエンジェルや銀行からすると「大丈夫なのかな?」と不安になりますよ。理由があってはっきりとしているのは、金融機関からすると評価が高いんですよ。

渋谷:なるほど、それは初めて聞きました(笑)

上原:経営なんて判断の連続なんですから、判断できない人は経営者に向かないですよね。

渋谷:そうですね。やっぱり中途半端でやるのも迷惑になるし、しっかりと伝えないと。僕もノーと言えないときはあるけれど、ノーということが必ずしも失礼なこととはならない。だからちゃんと伝えて、話し合うことが大事だと思います。

広がるコラボレーションの輪

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

◀KOIL内にあるFULLER㈱のオフィス。置き畳の上で対談中。

FULLERでは、大企業とのコラボ事例が他にもあると聞いていますが。

渋谷:日本交通さんと一緒にアプリを作らせていただきました。その代わりに、日本交通のタクシー全台に広告を載せて頂いて、BtoBの面ですごく効果がありました。タクシーはビジネスマンが乗るので、弊社の弁護士の先生も、株主さんやお付き合いしている会社さんたちも「あれ毎朝見る」って言ってもらえました(笑)。その繰り返し効果が凄くて、予想していなかった意外なところでメリットがありました。最初のきっかけは、ちょっとでも意味があるなと思ったらはじめてみることが大事なんだなぁって学びましたね。そして、弊社のこの畳。伊藤園の「お~い、お茶」の茶殻を使っているんです。実は、「お~い、お茶」はシリコンバレーですごく有名で、グーグルやエバーノートでも飲まれています。それは、「お~い、お茶」のブランディングの仕方が、「ITを応援します」と前面に打ち出していて、日本でも「IT応援」で「ITOUEN」だ!と(笑)。僕らが毎回イベントするときにはお茶もって駆けつけてくれましたし、畳があると日本らしさが出ますし雑談も出来る。

三菱東京UFJ銀行で、他ベンチャー企業と行っている取り組みはあるのでしょうか。

上原:今実際に、何社かとお付き合いしているのですけれど、TEPのアントレプレナー会員さんで、音声を識別して文字に落とすベンチャーさんがいらっしゃって、面白いと思いプロトタイプ作りに挑戦してもらっています。

だいぶ具体的に進んでいますね。どういったニーズがあったのでしょうか。

上原:銀行内のちょっとした情報って記録化されないんですよ。今後は、借り入れがどんどん減っていって、投資の運用がどんどんと増えていくのですが、運用の世界ってちょっとした情報の連続なんです。例えば、銀行が「一億円運用させてください」といっても、お客さんが「いや○○證券でこういうレートでやっちゃったんだよね」で終わっちゃう。でもこの情報は、5年後に満期になったときに使えるかもしれない。証券会社とかプライベートバンカーは何十年も顧客と交流を持ちますけれど、銀行員は転勤するので勝てないんです。記録化してデータベースでビジネスする、というのが銀行のビジネスモデルなので、そのようなお客様との会話をなんとか記録化させたいと思ったときに、そのベンチャーさんにたまたま出会ったんです。

銀行のビジネスを大きく支えるサービスになりそうですね。

上原:そうですね。これが完成すると、担当者にとっては聞いたことも無い情報だけど、データベースから5年ぐらい前の情報をもとに、「こういうのはいかがですか?」と提案ができる。そういうのを作りたいなと、チャレンジしています。

実際、開発にはどのくらい関わっているのでしょうか。

上原:今実際にテストをしていますけれど、うちの担当を一カ月ぐらいつけて、もう毎週のように課題出しをしています(笑)。結構改善して頂けました。そのベンチャー企業は、2、3人という少ない人数で作っていらっしゃるので、どんどんと改善していけるんですよ。彼らにとっても我々から問題提起することで、社中では気がつかなかった点の改善が進んでいくのが良いみたいです。

渋谷:そうですね、お客様がいた方が、プロダクトは成長しますよね。ユーザーの声は本当に大事ですよね。

お互いのやり取りの中で、だいぶ成長していくのですね。

上原:すごく厳しいですけどね(笑)最初はもうダメじゃないかという感じだったけれど、もうちょっと頑張れと担当に言って、改良を重ねて向上してくると、そしたら担当者も愛情もわいてきて、絶対にこれをなんとか採用したい!みたいになりました。一緒にやるとそうなってきますね(笑)

ベンチャー企業×大企業、両社のメリット

大企業からみて、ベンチャーとコラボすることのメリットは何でしょうか?

上原:欲しいサービスがある時に大手に発注しても、パッケージ化されていて高いし、やりたいことが実現しにくい。だからベンチャーと組むことで、我々が実現したいと思うものをそれなりの予算でしっかりと作っていくことができる、ということはとても大きいことなんです。先ほどのベンチャー企業やFULLERさんとはTEPを通じた偶然の出会いで繋がったものです。だから、何が起こるかわからないですよね、出会ってみたらなんか行けそうじゃないの、と。

ベンチャー企業の成長にとって、大企業とのコラボレーションによる効果は何でしょうか。

渋谷:大企業と、お互いの「気づき」を共有できるから、ビジネスアイデアが生まれやすいですね。ベンチャー企業のフェーズで起こる悩みには、割と共通点があるのですが、大企業にも同じようにフェーズで起きている共通の悩みがあるはずで、それは話さないとわからないんです。悩みというのは割と強烈なニーズでもあり、ニーズがあるということは、ビジネスになります。だから、ビジネスアイデア的に非常に良いと思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA
Share Button